消費税は、
誰のための税なのか
「みんなで広く薄く負担する公平な税」「社会保障の財源」と説明されてきた消費税。データを並べると、小さな事業者が自腹で納め、輸出大企業には11.4兆円が還付され、法人税減税の恵みは株主への配当に回ってきた姿が見えてきます。学習会のスライドに沿って、論点を一つずつ整理しました。
問い:お金はあるのに、なぜ?
国の税収
2025年度 84兆2,226億円。6年連続で過去最高(うち消費税 26兆278億円)
日本の対外純資産
1991年から2023年まで33年間、世界最大の対外純資産国だった
実質賃金
所得の中央値は約405万円。男性約501万円・女性約278万円、正社員約466万円・非正規約178万円
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国にはお金が入っている。日本全体としてもお金はある。それなのに、実質賃金は30年間ほとんど伸びていません。男性と女性、正社員と非正規の間には大きな差があります。
私は、その原因が「大企業を優先してきた経済政策」と「消費税の増税」にあると考えています。この特集では、それが本当にそうなのかを、データで一つずつ確かめていきます。
消費税の仕組み:誰が、何を納めているのか
15万円+税1.5万円
仕入れ先に払った消費税
20万円+税2万円
お客さんから受け取った消費税
2万円−1.5万円=5,000円
差し引き(仕入税額控除)
納税義務者は事業者
国に消費税を納めるのは事業者。消費者は納税義務者ではない。
消費税は「預かり金」ではない
消費者が払う分は「価格の一部」(東京地裁 1990年3月26日判決)。転嫁できるかは力関係次第。
赤字でも納税
賃金は差し引けないため、利益が出ていなくても納税が発生する。
輸出は税率0%で全額還付
輸出企業には仕入れの消費税が戻る。
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お店が15万円で仕入れ、消費税1.5万円を払ったとします。それを20万円で売り、お客さんから消費税2万円を受け取ります。国に納めるのは差額の5,000円です。売上の税から仕入れの税を引くこの仕組みを「仕入税額控除」と言います。
「預かり金」ではないということ
1990年3月26日の東京地裁判決は、消費者が払う消費税分を「商品の対価の一部」としました。値段に上乗せできるかどうかは、事業者の力関係で決まります。同じ判決は、消費者が実質的な負担者であることも認めています。問題は、その負担を価格に乗せられない事業者が、自分でかぶっていることです。
赤字でも納税が生じる理由
人件費、つまり賃金は「仕入れ」として差し引けません。だから利益が出ていなくても、売上と仕入れの差に税がかかります。法人税が利益にかかるのとは、ここが大きく違います。
消費税を「税の原則」で点検する
同じものを買えば、誰でも同じ税(水平的公平)
所得が低い人ほど負担が重い=逆進性。力のある人ほど多く払う「応能負担」になっていない
経済活動をゆがめない
輸出大企業は還付で潤い、中小は転嫁できず自腹。派遣を使うほど納税が減り、正社員雇用が不利に。大企業優遇で、個人・中小との非対称
仕組みが単純で、取りやすい
複数税率とインボイスで膨大なQ&A・事務負担。条文は例外と特例だらけで専門家でも難解。オロナミンCは8%、リポビタンDは10%
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公平
税には「垂直的公平」という考え方があります。力のある人ほど多く払う、応能負担です。収入のほとんどを生活に使う人と、大部分を貯蓄や投資に回せる人が同じ10%を払えば、負担の重さはまったく違います。
中立
派遣会社に払う派遣料には消費税が含まれるので、仕入れとして差し引けます。正社員の給料は差し引けません。正社員を派遣に置き換えるほど納税が減る仕組みが、税制に組み込まれているのです。派遣で働いていた私にとって、これは他人事ではありません。
簡素
来年からは1%・8%・10%の3税率になり、どこまでが食品かという線引きはさらに複雑になります。オロナミンCは清涼飲料なので8%、リポビタンDは医薬部外品なので10%です。
大企業と中小零細の非対称
- コスト上昇分の価格転嫁率は 54.2%(中小企業庁 2026年6月)
- 転嫁できない消費税は自腹で納税
- 赤字でも納税 → 税金滞納倒産 168件(2026年度上半期、前年同期の2倍)
- 輸出は税率0% → 仕入れの消費税は全額還付
- 企業への還付金 11.4兆円
- トヨタ1社で推計 6,811億円(湖東京至氏の試算)
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日本の企業の99.7%は中小企業です。中小企業庁の調査では、コストが上がった分のうち価格に転嫁できたのは54.2%。半分近くは自分でかぶっています。消費税も同じで、転嫁できない分は自腹で納めることになります。一度滞納すると延滞税がかさみ、資金繰りは一気に苦しくなります。
一方、輸出は税率0%なので、仕入れで払った消費税は全額戻ってきます。還付そのものは、払った税を返す制度です。問題は、下請けに値下げを迫れる大企業が、仕入れ値を抑えたまま還付を受けられることです。
54.2%は消費税ではなく、コスト全体の転嫁率です。トヨタの額は推計値です。
消費税はどこへ行く? 還付金と地方の非対称
11.4兆円
7.2兆円
25.0兆円
※国の一般会計分のうち約4.9兆円(19.5%)は地方交付税として地方へ
企業への還付金
輸出企業などに払い戻される消費税
地方消費税
都道府県・市区町村の暮らしの財源
出典:財務省「令和6年度 国税収納金整理資金受払計算書」(収納済額43兆4,783億円、還付金11兆3,710億円、地方消費税払込金7兆1,672億円、一般会計組入額25兆212億円)
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財務省の決算資料「国税収納金整理資金受払計算書」で、消費税の出入りを確かめました。令和6年度、国に納められた消費税は地方分も含めて43.5兆円。このうち11.4兆円は企業への還付金として戻り、地方消費税として自治体に回ったのは7.2兆円でした。
私たちの暮らしを支える自治体の財源よりも多いお金が、企業に戻っています。小さな事業者が転嫁できずに自腹で納めた消費税も、この43.5兆円の中に入っています。
還付金には、大きな設備投資をした企業への還付なども含まれます。地方交付税分を合わせると、地方に回る額は約12兆円で、還付金とほぼ同じ規模です。
インボイス制度の導入
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インボイスとは、国が定めたルールどおりに税率や消費税額を書いた請求書や領収書のことです。年売上1,000万円以下の免税事業者はこれを出せず、買い手の会社は仕入れの消費税を全額は差し引けなくなります。
差し引けない分は買い手の負担です。だから「インボイスを出せないなら取引をやめる」「その分を値引きしてほしい」という圧力が、年を追うごとに強まります。フリーランス、個人商店、翻訳者、イラストレーター、個人タクシー。身の回りで働く人たちにとって、事実上の増税です。
当初は2026年10月に一気に50%まで下がる予定でした。緩和されたのは、政府自身が負担の重さを認めたからです。ただしこれは廃止ではなく、先延ばしです。2023年の休廃業・解散は全国で5万9,105件、前年より10.6%増えました。
食品消費税1%は、庶民にとっていいのか?
下がるのは歓迎
毎日の食費が、すぐに安くなる。「消費税は下げられない」と言ってきた政府が下げたのは、声を上げてきた人たちの成果。
① 2年後に8%へ戻る
2029年春に1%→8%。「減税」ではなく「増税の予約付きの減税」。
② 2年限定では経済効果は小さい
一時的な減税は消費に回りにくく、価格にも反映されにくい(ドイツ2020年の例)。終了前の駆け込みと反動減で景気を乱す。
③ 売る側の負担
1%・8%・10%の3税率。区内の小さなスーパーは約1,700品目の値札を作り直し、2年後にもう一度。
④ 外食はさらに苦しく
店内飲食は10%のまま。食料品1%との差は9ポイントに広がり外食離れの懸念。人手不足倒産も過去最多240件(2026年度上半期)。
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政府は9月、食料品の消費税を2027年4月から2年間、1%に下げることを決めました。
2年限定では効かない
「どうせ2年で元に戻る」と分かっている減税は、貯蓄に回りやすく、消費はあまり増えません。お店の側も値札を下げきらないことがあります。ドイツが2020年に付加価値税を半年だけ下げたときも、価格への反映は一部にとどまったと評価されています。終わる直前には駆け込み需要が起き、その後に反動で落ち込みます。
外食への影響
お店で食べる外食は10%のままです。今は食料品8%との差が2ポイントですが、これが9ポイントに広がります。飲食店は「募集しても人が来ない」人手不足と、賃上げの限界にも直面しています。食べる人の負担を軽くするはずの減税が、地域の食堂や居酒屋をさらに追い詰めるかもしれません。
経済を本当に立て直すなら、期限付きではなく、恒久的な減税、そして廃止が必要です。1%にできるなら、0%にも、廃止にもできるはずです。
240件は全業種の人手不足倒産(東京商工リサーチ調べ)で、飲食店だけの件数ではありません。
消費税が上がるたび、法人税は下がってきた
出典:財務省「法人税率の推移」をもとに作成(法人税の基本税率)
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国は「消費税は社会保障の財源だ」と説明してきました。しかし1989年に消費税3%が導入されると、法人税は40%から37.5%へ。1997年に5%に上がると、34.5%、そして30%へ。2014年に8%、2019年に10%と上がる間に、25.5%から23.2%まで下げられました。
税金は一般会計という一つの財布に入ります。お金に色はありません。全体として見れば、消費税は法人税減税の穴埋めになってきたと私は考えます。
また、特定の業界や企業の税を軽くする租税特別措置は、大企業ほど使いやすいと指摘されています。経団連は2012年、消費税19%・法人実効税率25%を前提とした試算を公表しています。
配当は8倍、給与は横ばい
株は、お金がお金を生む仕組み
売上はほぼ横ばい。なのに利益3.8倍、配当8倍。働く人の給与は25年間変わらず、国内への設備投資は減少。法人税減税の恵みは株主へ。
これまでの政治
株価と配当を上げることを中心にしてきた。お金を持っている人ほどお金が増え、働いて稼ぐ人の分は増えない。
出典:財務省「法人企業統計調査年報」(時系列データ)
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法人税を下げて浮いたお金は、どこへ行ったのでしょうか。消費税が5%に上がった1997年度を100とすると、2022年度の大企業の売上高は109。ほとんど増えていません。なのに経常利益は380、配当は809です。働く人の給与は100、設備投資は87でした。
売上が増えないのに利益が増えたのは、人件費や投資を抑え、税が下がったからです。その利益は、働く人にも未来への投資にも回らず、株主に回りました。
株というのは、お金がお金を生む仕組みです。それを経済の中心に置けば、格差は広がり、社会は壊れていきます。実際に、今の日本は壊れかかっています。
従業員給与は総額の指数です。配当の伸びには、株主重視の経営への転換など減税以外の要因もあります。それでも、増えた利益が誰に届いたかは、この数字が示しています。
消費税は「衰退装置」か?
① 消費を冷やす
増税のたび個人消費が落ち込んだ(1997・2014・2019年)。10%でついに元に戻らなくなった。
② 弱いところほど重い
低所得ほど負担率が高い。事業者は赤字でも納税。インボイスが追い打ち。
③ 負担の付け替え
消費税3%→10%の一方で、法人税40%→23.2%、所得税の最高税率も引き下げ。
消費が伸びない → 国内に投資しない → 賃金が上がらない → さらに消費が冷える
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日本経済の5割強は個人消費で回っています。買うたびにかかる消費税は、そこにブレーキをかけ続けてきました。1997年、2014年、2019年と、増税のたびに個人消費は落ち込みました。
超富裕層への課税強化がようやく始まりますが、適用は2027年分からです。消費が伸びず、企業は国内に投資せず、賃金が上がらない。この悪循環を回す大きな歯車の一つが、消費税だと私は考えています。
歴史と海外の教訓
世界恐慌
不況の中で金解禁。円高を守るため厳しい緊縮
デフレと農村の困窮。娘の身売りが相次ぐ。「こんな政治はおかしい」
テロと軍部の台頭、そして戦争へ。日本全体が右傾化
| アイスランド | ギリシャ | |
|---|---|---|
| 通貨 | 自国通貨クローナ、中央銀行あり | ユーロ。自分で通貨を発行できない |
| 選択 | 破綻銀行への税金投入を国民投票で拒否。医療・社会保障を守る | トロイカの緊縮策を受け入れ。年金・医療を削減 |
| 結果 | 経済は回復。幸福度は世界トップクラスに | 失業率は一時25%超、自殺が増加、極右政党が台頭 |
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「財源が足りないから、支出を削り、負担を増やす」。緊縮財政は、過去にも社会を壊してきました。1930年、浜口内閣は世界恐慌の最中に金解禁に踏み切り、井上準之助蔵相は厳しい緊縮財政を行いました。デフレが深まり、最も苦しんだのは農村でした。
その後、高橋是清は金本位制を離脱し、積極財政で農村を救済して短期間でデフレを脱しました。しかし軍事予算を抑えようとした高橋自身も2.26事件で殺害され、日本は戦争へ向かいます。戦争の原因は一つではありません。ですが、国民の不安や不満、企業の儲け主義は、戦争の引き金になりうるのです。
明暗を分けたのは、自国通貨と中央銀行があるかどうかでした。日本には円があり、日本銀行があります。
お金はある。日本は破綻しない
✓ 自国通貨「円」がある
✓ 中央銀行「日本銀行」がある
✓ 国債はほぼ円建て・国内保有
✓ 外国にお金を貸している側
「1人あたり1,000万円の借金」?
それは「政府の」負債。政府の負債は、国民(民間)の資産。国債の発行を通じて、国民1人あたり約1,000万円分のお金が民間に回っている。
日本だけの「60年償還ルール」
2026年度予算の債務償還費。一般会計122.3兆円の約15%、消費税収の約7割。他の主要国は借り換えが普通で、元本の返済は予算に載せない。
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60年償還ルールとは
国債を60年かけて現金で返すという日本独自の考え方で、毎年、国債残高の約60分の1(1.6%)を一般会計から返済用の基金に繰り入れています。他の主要国では満期が来た国債は借り換えるのが普通で、予算に載るのは利払いだけです。日本は元本の返済まで歳出に計上しているので、赤字が大きく見えます。
税の役割
税には本来、公共サービスの資金調達、所得の再分配、景気の安定化(自動調節機能・経済政策)という3つの役割があります。国債を無限に刷れるわけではなく、限界を決めるのは借金の額ではなく、インフレ率と供給力です。
欧州の消費税20%の中身
欧州の付加価値税は20%前後と高いですが、児童手当や住宅手当が手厚く、大学まで教育費は原則無料、医療費・出産費の自己負担もほぼゼロです。公営住宅の割合は日本の約3〜4%に対し、欧州主要国は約10〜30%。税率だけを欧州に近づけても、暮らしは支えられません。
国債の約半分は日本銀行が保有しています。ルールをやめても返済のお金が湧くわけではなく、借換債で回す分が増えるという整理になります。変わるのは予算の見え方と、財源論の前提です。
30年の不況と衰退を止めるために
30年以上、日本だけ賃金が上がらない「緊急事態」
緊急事態には、特別な財源を投入して手当てする
物価が下がり、手取りが増える。中小零細の「自腹の納税」もなくなり、インボイスも不要に。
悪い物価高が収まるまで。1回きりでは貯蓄に回る。回復に合わせて続ける経済の「カンフル剤」。
国債発行/法人税の増税/累進課税の強化
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大企業が潤えば、いずれ下にもしたたり落ちる。そのトリクルダウンは起きず、企業の内部留保だけが500兆円を超えて積み上がりました。
これからは、家計がお金を持ち、それを使うことで、中小零細を含む国内の経済をボトムアップで豊かに回していく。そのために、消費税の廃止と、悪い物価高が収まるまでの季節ごとの現金給付を行います。財源は当面の国債発行と、法人税の増税、累進課税の強化です。
「1%にできるなら、0%にも、廃止にもできる」。問題は、できるかどうかではなく、やるかどうかです。どんな社会を設計するのか。それを決めるのは、私たち一人ひとりです。
