なぜ、この問題を訴え続けているのか。
特集 | 新宿御苑「放射能汚染土」問題
2023年の初めての一般質問から、私はこの問題を繰り返し取り上げてきました。 その活動の経緯と、議会で起きた出来事、そして「汚染土」という言葉をめぐる事実関係を、 これまでの資料をもとにまとめます。
1原点
脱原発運動との出会いから、なぜこの問題を政治家として引き受けようと思ったか。
— さわいめぐみ「想い」より
— さわいめぐみブログ「福島県いわき市へ、放射能汚染土 中間貯蔵施設の見学へ」より(要約)
2これまでの経緯
一般質問・委員会・報道・区民の動きを時系列でまとめました。
2022年12月21日
環境省が新宿御苑インフォメーションセンターで住民説明会を開催
新宿御苑管理事務所で実施予定の実証事業について、環境省が近隣住民28名を対象に初めて説明会を実施。福島県外での実証事業として、新宿御苑・所沢市(防衛医大)・つくば市(国立環境研究所)の3か所が候補地として挙がっていることが明らかになった。
2023年6月13日
初めての一般質問「新宿御苑における『放射能汚染土』再生利用の実証事業について」
8,000ベクレル/kgという基準緩和の経緯、災害時の対応、区民の同意なしに搬入しないことなどを区長に質問。以来、機会を捉えてこの問題を取り上げ続けている。
全文を読む2023年頃
「新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会」が発足
住民説明会の開催方法などをめぐり、周辺住民らが反対運動を継続。以降、環境省ヒアリングや経過報告会などを重ねている。
2024年9月20日
記録的豪雨を受けた一般質問「豪雨で判明した『放射能汚染土』実証事業の安全性」
実証事業予定地周辺の豪雨浸水を踏まえ、遮水シート省略の検討にも言及。「これは再生利用ではありません。汚染の移動です。」と結んだ。
全文を読む2024年9月20日(同日)
自民党・渡辺みちたか区議より動議
「質問の発言に職業差別・人権侵害につながり得る言葉があった」として、議会としての対応と協議を求める動議が提出された。
2024年9月(動議後)
全会派による協議 → 結論に至らず
自民党・公明党は「汚染土」という表現に批判的な立場を示した一方、立憲民主党・無所属クラブや共産党系会派は「議員個人の表現の自由の範囲内」「環境省・国会・新聞でも使われる言葉」として明確に反論。最終的に「一致した結論を出せなかった」として協議を終了した。
2025年2月
「放射能汚染土の全国拡散、その是非を問う」特集号を発行
実証事業の科学的な問題点(基準の80倍緩和、想定外の豪雨浸水、空間線量だけでは測れないリスクなど)を特集記事としてまとめ、区民に配布。
2025年3月6日
産経新聞「原発事故報道、風評『加害』にメディアの責任は」
東日本大震災14年の特集記事内で、動議の経緯とともに沢居・渡辺両氏のコメントを掲載。取材に対し「放射能汚染はなくなるわけではなく、汚染土はその通りの言葉」とコメントした。
2025年11月27日
「命と人権を守る財源の使い方」をテーマに再質問
実証事業の受注企業組合と自民党政治資金団体との献金関係、福島の甲状腺がん裁判の当事者の証言などを引用し、国の姿勢を追及した。
2025年7月〜2026年4月
首相官邸・合同庁舎など12か所で再利用が進行
新宿御苑では止まったものの、国は2025年7月に首相官邸敷地内で再利用を開始。以降、各省庁の合同庁舎や最高裁の花壇・緑地帯でも実施し、2026年4月までに計12か所に拡大した。
2026年8月26日
さいたま新都心・仙台の国施設に拡大、福島県外で初
東京新聞の報道によると、さいたま新都心合同庁舎1号館と仙台の国施設が新たに再利用場所となり、福島県外では初めての実施に。環境省担当者は「速やかに実施したい」とする一方、識者は「国の管理する施設にしか搬出できていないのが現状」「住民との合意なき搬出は解決にならない」と指摘している。
〜現在
新宿御苑では止まったが、国全体としては再利用を拡大中
区民の反対運動もあり、新宿御苑での実証事業は現時点で進んでいない。ただし国は、住民合意を必要としない国有施設を中心に再利用の実績を積み重ねており、「やらないとは言っていない」との立場を崩していない。監視が必要な状況が続く。
3新宿区議会に提出された陳情
この問題については、区民から新宿区議会に対しても複数回、陳情が提出されています。しかし、いずれも結論が出ないまま「審議未了」となっています。
| 番号 | 件名 | 受理日 | 結果 | |
|---|---|---|---|---|
| 5陳情第10号 | 新宿御苑における放射能汚染土再生利用の「実証事業」に関する意見書の提出を求める陳情 | 2023年2月20日 | 審議未了 | 審議状況 |
| 5陳情第15号 | 新宿御苑における放射能汚染土再生利用の「実証事業」に関する意見書の提出を求める陳情 | 2023年6月5日 | 審議未了 | 審議状況 |
| 5陳情第37号 | 新宿御苑での放射能汚染土「実証事業」についての公開説明会の開催を国に求める陳情 | 2023年10月3日 | 審議未了 | 審議状況 |
| 6陳情第15号 | 新宿御苑での放射能汚染土(除染土、除去土壌)再生利用実証事業の中止を求める陳情 | 2024年10月2日 | 審議未了 | 審議状況 |
| 7陳情第9号 | 新宿御苑における放射能汚染土(除染土、除去土壌)を用いた再生利用実証事業に関わる情報収集と区民への情報公開を求める陳情 | 2025年3月10日 | 審議未了 | 審議状況 |
| 7陳情第26号 | 新宿御苑を除去土壌等の再生利用事業の候補地から外すことを国に求める陳情 | 2025年10月6日 | 審議未了 | 審議状況 |
※ 2023年〜2025年の3年間で、少なくとも6件の陳情が区議会に提出されているが、いずれも結論に至っていない。「審議未了」は、採択でも不採択でもなく、結論を出さないまま審議が終わる扱いを指す。
自民党(渡辺みちたか委員)
動議に賛成「汚染土」とレッテルを貼ることは、除染に携わる方々や福島の方々への配慮・敬意を欠く発言であり、職業差別・人権侵害につながり得ると主張。
公明党
批判的除去土壌の国民的な周知・議論の必要性を述べた上で、「汚染土」という表現は適切ではないと感じるとの立場を表明。
立憲民主党・無所属クラブ(小野裕次郎委員)
動議に反対党としては使わない言葉としつつ、区民を代表する議員が自らの責任で言葉を選ぶことを制約すべきではないと明言。
川村のりあき委員
動議に反対「汚染土」は環境省・国会・新聞でも使用されている言葉であり、区議会で使うことに問題はないと明確に反論。所沢市の事例も引用し、住民の不安を代弁するのは議員として当然と述べた。
※ このほか複数会派から発言があり、最終的に議会運営委員会理事会は「一致した結論を出せなかった」として協議を終了。動議は成立していません。
5「汚染土」という言葉について
動議の核心は、この言葉の使用が適切かどうかでした。事実関係を整理します。
言葉としての使用実態
「汚染土」という表現は、環境省の内部資料や国会答弁、多くの新聞報道でも使われてきた一般的な語です。政府が正式な行政用語として用いるのは「除去土壌」ですが、これは放射性物質を含む土であるという実質を否定するものではありません。
渡辺氏が根拠とする国連声明について
渡辺氏のブログは、2023年に国連ビジネスと人権作業部会が発表した声明を根拠に「汚染土という呼称が人権侵害につながる」と主張しています。しかし、この声明が実際に触れているのは福島第一原発での作業員の労務・被曝リスクに関する保護についてであり、「汚染土」という呼称そのものへの言及ではありません。2018年に国連特別報告者が出した声明も同様に、除染作業員の労働環境・被曝防護についての懸念であり、呼称問題とは別の論点です。
6産経新聞の報道について
2025年3月6日、東日本大震災14年の特集記事の中で、この問題が取り上げられました。
記事は「原発事故報道と風評加害」という大きなテーマの中で、動議のやり取りを一事例として紹介する構成でした。取材には沢居・渡辺両氏がそれぞれ応じ、双方のコメントが掲載されています。
— 産経新聞 2025年3月6日「原発事故報道、風評『加害』にメディアの責任は」より
記事全体としては「汚染水」「汚染土」という呼称に懸念を示す立場の識者コメントが中心の構成でしたが、当事者双方の見解が併記されている点は、報道として押さえておきたい事実です。
7さわいめぐみの情報開示請求で分かったこと
放射能汚染の後始末に、実際どれだけの税金相当のコストがかかっているのか。さわいめぐみが自ら情報開示請求を行って入手した資料から分かった事実です。
東京都上下水道局は、下水処理の過程で生じる汚泥・焼却灰から放射性物質が検出されたことに伴う損害について、継続的に東京電力へ賠償請求を行っています。令和6年12月、令和5年度分として東京電力に提出された「損害賠償金の請求の事前協議」文書には、次の金額が記載されていました。
約11億円
令和5年度単年度の請求総額
(検査費用+保管・処分費用等)
約8.8億円
うち「炭化事業に関係する費用」
(東部スラッジプラントの運転維持費等)
| 費目 | 令和5年度 請求額 |
|---|---|
| 放射能測定検査費用(機器賃借・保守点検・線量測定 等) | 13,626,078円 |
| 焼却灰の運搬費用の増加分 | 120,262,886円 |
| 焼却灰の埋立負担金 | 11,438,018円 |
| 焼却灰の資源化経費の増加分 | 64,438,706円 |
| 炭化事業に関係する費用(運転維持費・運搬費・処分費 等) | 884,045,171円 |
| 焼却炉工事時の測定費用(作業員の被ばく対策含む) | 5,789,174円 |
| 混練施設の稼働費用 | 3,870,460円 |
| 合計 | 1,103,470,493円 |
※ 令和5年度(令和5年4月〜令和6年3月)分のみの金額。この賠償請求は毎年度継続的に行われている。
実際に支払われた事例:水元公園(葛飾区)
2012年、水元公園(葛飾区)で実施された簡易除染対策の費用について、東京都と東京電力の間で和解が成立(2024年11月14日付)。東京電力は192万円の支払い義務があることを認め、東京都に支払った。これは、放射性物質による汚染への対応費用が、実際に「損害」として東京電力から賠償されている一例である。
あわせて、都内の下水処理施設(葛西・東部・南部など)では、令和5年度を通じて焼却灰から放射性物質が継続的に検出されており、クリアランスレベル(100Bq/kg)を超える月が複数の施設で確認された。都内でも、汚染は「よそごと」ではないことを示すデータといえる。
⚠️ 令和5年度、月別最大値で100Bq/kgを超えた施設(放射能濃度データより)
- 葛西水再生センター:年間すべての月で100Bq/kgを超過。最大は525Bq/kg(9月)
- 東部スラッジプラント:6か月で超過。最大は210Bq/kg(10月)
- みやぎ水再生センター:最大210Bq/kg(5月)
- 新河岸水再生センター:最大130Bq/kg(5月)
- 北多摩一号水再生センター:最大110Bq/kg(9月)
- 北多摩二号水再生センター:最大110Bq/kg(4月)
開示された資料(原本PDF)